令和3(2021)年度用 中学校数学 内容解説資料A
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532年の図形領域では,仮定と結論,その間をつなぐ根拠となることがらを明らかにしながら,具体的な証明を記述することを学びます。証明は,苦手意識を持つ生徒が多い内容です。その理由としては,「わかりきっているのに,どうして証明しなければならないかがわからない」,「証明をどのように考えればよいかがわからない」などが考えられます。「4章 図形の調べ方」では,証明に入る前に,帰納的に調べていくことと演繹的に説明することの違いを考える場面を設けています。また,「5章 図形の性質と証明」では,「分度器で測るなど実測するだけで証明といえるのか」など証明の意味を考える場面を設けています。このような箇所を設けることで,証明の必要性と意味を随所で確認することができます。証明の考え方については,証明を書く前に,まず,証明の見通しを立てることを大切にしています。「4章 図形の調べ方」では,証明の見通しの立て方を丁寧に説明しています。見通しを立てることで,どの三角形に着目して証明を書きはじめればよいか,証明を書く際の糸口を見つけることができます。「5章 図形の性質と証明」では,利用の項を新設しています。それまでに証明してきた図形の性質が身のまわりで役立てられていることを実感できるようにしています。図形の性質についての理解を深めるための流れ・4章 図形の調べ方・5章 図形の性質と証明●証明の必要性と意味,方法をしっかり理解するための構成●図形の性質の利用場面を充実四角形の性質の利用5かりんさんの家には,折りたたみ式テーブルが あります。折りたたみ式で,使わないときには たたんで収納することができて便利です。調べてみると,テーブルの板と床ゆかの面が いつも平行になりそうです。なぜそうなるのか,気になったかりんさんは, そのしくみを調べることにしました。利用場面折りたたみ式テーブルのしくみテーブルのしくみを調べて,真横から見た図で表すと, 次のようになっていました。場面の状況を整理し,問題を設定しようステップ1(ア) 2本の脚あしは,点Oで固定されており, 点Oを軸じくとして動く。BA板510125図形の性質と証明5章三角形節1話しあおう(ア)のことがらが,AB=ACであるどんな三角形でも成り立つことを 示すのに,下の2つの説明は証明といえるでしょうか。 4AB=ACの△ABCを紙でつくって, 2つに折るとぴったり重なるので, ∠B=∠Cが成り立つ。AC,BAB=ACの△ABCをかいて,∠Bと∠Cの 大きさを分度器で測ってくらべると 等しくなるので,∠B=∠Cが成り立つ。ABCABC5前の章でも同じような ことを考えたねここからは,三角形の 性質を,証明によって 明らかにしていくよいろいろな三角形の性質をみつけて,それを証明しましょう。510113図形の調べ方4章2つの角の大きさが等しいことを説明するために,図に対角線をかき加えて 三角形をつくり,これまでに学んだ三角形の合同条件を利用できないかと考えた。証明とそのしくみ1図形の性質を明らかにするしくみについて学びましょう。前ページでかいた四角形ABCDでは,AB=AD,BC=DCのとき,∠ABC=∠ADC ……⑴が成り立ちます。このことは,どのように説明できるでしょうか。ABDC説明しよう上の⑴のことがらが成り立つことについて,けいたさんと かりんさんが,次のような会話をしています。かりんさんのいうように,△ABC≡△ADCとなるのはなぜでしょうか。また,∠ABC=∠ADCとなる理由もいいましょう。上の図で,角の大きさを測ったら,∠ABC=∠ADCだったけど,辺の長さを 変えると,角の大きさも 変わって,測りなおさないと いけないねABDC実際に測らなくても, 対角線ACをひくと,AB=AD,BC=DCだから,△ABC≡△ADCになるよね。そこから,∠ABC=∠ADCがいえるよABDCけいたかりんこのように,これまでに学習した図形の性質を使って, ∠ABC=∠ADCを導くと,辺の長さをどのように変えても, 上の⑴のことがらがいつでも成り立つことが説明できます。510●2年 みんなで学ぼう編 p.152●2年 みんなで学ぼう編 p.118~119●2年 みんなで学ぼう編 p.125●2年 みんなで学ぼう編 p.113119図形の調べ方4章証明するために,仮定や結論をはっきりさせ,結論を導くために必要なことがらは何か, 仮定から導かれることは何かと考えた。証明△OAPと△OBQで,仮定より,OはABの中点だから, AO=BO ……①対頂角は等しいから, ∠AOP=∠BOQ ……②平行線の錯角は等しいので,l//mから, ∠OAP=∠OBQ ……③①,②,③から,1組の辺とその両端の角が, それぞれ等しいので, △OAP≡△OBQ合同な図形では,対応する辺の長さは等しいので, AP=BQmlnAPOBQ問1 線分ABとCDが点Eで交わっているとき,AE=DE,CE=BEならば,AC=DBであることを証明するために,まずは下のような 証明の見通しを立てました。このことをもとに,証明を書きなさい。ADCBE結論を導くためのことがらを考えるAC=DBを導くために,AC,DBを,それぞれ 1辺にもつ2つの三角形△ACEと△DBEについて, △ACE≡△DBEが示せるかどうかを考える。仮定や仮定から導かれることがらを整理する△ACEと△DBEについて,仮定より, AE=DE,CE=BE対頂角は等しいから, ∠AEC=∠DEB考えたことを結びつける上のことから,△ACEと△DBEについて, 2組の辺とその間の角が,それぞれ等しいので, △ACE≡△DBEが示せる。ADCBEADCBE51015202530118図形の調べ方4章?△OAP≡△OBQを示せば,AP=BQがいえるのはなぜかな。AP=BQを導くために, AP,BQを,それぞれ1辺にもつ2つの三角形△OAPと△OBQに着目する。mlnAPOBQ△OAP≡△OBQを 示せば,AP=BQを 導けるね結論を導くためのことがらを考えるまずは図に印をつけてから, 着目する2つの三角形を 考えてもいいよ対頂角は等しい から, ∠AOP=∠BOQmnAPOBQl平行線の錯角は 等しいので, 仮定l//mから, ∠OAP=∠OBQmnAPOBQl仮定より,AO=BOmnAPOBQl△OAPと△OBQについて,長さが等しいといえる辺, 大きさが等しいといえる角を見つけ,図に印をつける。仮定や仮定から導かれることがらを整理する△OAP≡△OBQを示すには, 仮定や仮定から導かれることがらをもとに, 三角形の合同条件のどれを使うことができるかを考える。考えたことを結びつけるこれまでに考えたことから,証明は,次のページのように 書くことができます。510学年別の特色2年

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